2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧
@shindokumaru: 「あなたの踊りには魂を感じない」老齢の舞踊家を若者が非難した。「じゃ踊り比べしようか」勝負が始まった。全力を絞った若者が息切れするのを尻目に舞踊家は淡々と踊って、やがてその身が風になって空になって、若者と世界を覆った。「あな…
@shindokumaru: ”愛しい奥様。貴方様のことを恋い慕う私は何時もご尊顔を拝したく、漸くにしてお側に身の置き場を見出しました。お気づきでしょうか、先日来甲冑にて身を固め、四六時中”…甲冑ってリビングに置いていたあれのこと?でもあれ昨日ぐるぐる巻き…
@shindokumaru: やぁ、僕はミラーボール。今日もみんなの頭上で大活躍さ。レッド、グリーン、イエロー。盛り上がってきたねー。ブルー、ピンク。ワイルドだねー。もうラストプレイ? んじゃ三原色のフルコース! ヒャッハー! …ふう、閉店か。疲れた。…とこ…
@shindokumaru: 今日は弟君の誕生日。そして兄君の命日。弟君が兄君に面差しが似てきた。胸に痛みが走る。昨日、兄君が賽の河原で私に似せた石の塔を崩す夢を見た。悪いのは私。ごめん。だからあなたの分まで弟君を育てるの。 弟君を抱っこし直した。弟君が…
@shindokumaru: 賽の河原で子供たちが石を積み上げていた。「何を作っているんだい?」「お母さんさ」「へえ、偉いね」「そして出来上がったら、壊すんだ」「なんで?」「恨みを晴らすためさ」子供の襟元は痣だらけだった。あっちの子もこっちの子も。子供た…
@shindokumaru: 時計。苛立。クラクション。手。文句。陳謝。助手席。出発。ハンドル。不機嫌。湾岸線。ドライブ。全速力。心拍数。笑。ベイブリッジ。夜景。山下公園。停止。依頼。バックドア。オープン。薔薇。山盛。驚愕。告白。指輪。平手打。文句。笑。…
@shindokumaru: 「看護婦さん、感謝しとるよ。単身赴任のまま離婚して30年生き別れ、しかも顔なんて全く似ていない娘を、駅前の雑踏の中であーた「あの人でしょ」とぴたりと言い当てた。どうしてわかったのかね?」「勘ですよ」…言える訳ないでしょ、あたし…
@shindokumaru: "貴方への気持ち"…亡き妻名義のキャッシュカードに、そう付箋がついていた。不倫相手とATMで残高確認しようとしたが、暗証番号がわからない。生年月日、電話番号、いろいろ試みた。「まさか」彼女が4桁押した。認証。残高は、ゼロ。「2914…奥…
@shindokumaru: 「首筋は”執着”、手の甲は”尊敬”…キスもする場所によって意味が変わるそうよ」「俺が好きな、あそこは?意味ないだろな」「そんなことないわよ。意味はあるわ、たぶん…"フェチ"」そう言って彼女が靴を脱いだ。僕はいつものように彼女の足の裏…
@shindokumaru: 学園祭の福引きで二等が当たった。シークレットだった景品は…「熱い男の叱咤激励がつくラブコメ的シチュエーション」。途端に向こうから松岡修造が走ってきて、俺と隣の女の子をいきなり添わせて「諦めんな!あともうちょっとだ!」…別れるだ…
@shindokumaru: あなた、あたしのこと奥さんにしてくれないまま死んじゃったわね。憎らしい。腹いせにこうしてやるこうしてやる。…これがあたしと遊んだ後のあなたのいつものお口。お別れついでのインモラルな復讐よ。さよなら。安らかに。…「あら、何かしら…
@shindokumaru: 「うぅさぶい…こんなに冷えるとは」…俺だって真打。話芸に自信はある。だからやってやる。真夏に「うどんや」…おっ、前の客が襟を立てた。あそこの客が首をぞわっとさせたぞ。やった、俺、話芸で夏の寄席を冬に「お客様申し訳ございません、…
@shindokumaru: オトコは外も中もスマートじゃなきゃ存在価値なしってことの証明に、あえてクラス一鈍臭いマサルとつきあってみた。うんざりした初日。でも一週間したら、鈍臭さが可愛く思えてきた。どうかしている、と思ってスマート男と浮気してみたら、つ…
@shindokumaru: どうして君は毎日その家の窓から僕のことを見ているんだい?朝も夜も同じ格好で。学校へは行かないの?気になって、だから今日君のうちへ来た。こんにちは。あれ鍵が空いてる。お邪魔します…この部屋かな。がちゃ。…お父さんもお母さんも一緒…
@shindokumaru: 師弟の懐かしい会話:師匠「この円盤、しーでぃーっていうんだろ?これはでじたるなんだろ?」弟子「そうですよ」師匠「でじたるってのは、0と1でできているんだろ?」弟子「よくご存知で」師匠「てことは、スピーカーからは音じゃなくて、0…
@shindokumaru: 彫った人形の数九十九。こいつら魂を持ってしまったようで、作者のいぬ間に他人様の寝室に入りこむ。そして朝になると持ち帰るのだ、夢を。夢は盗むものではなく与えるものですよ君たち。まぁでかした。山と積まれた夢を材料に私は彫る、百体…
「吉本の名優・花紀京がなんば花月裏の千とせに行って"肉うどん、うどん抜き"を頼んだ。それに応えて出てきたのが名物「肉吸い」。ひょんな一言で生まれる奇跡、いいね。では明日は"愛妻弁当、妻抜き"で」 翌日お昼に開けた弁当箱は空っぽだった。「愛」まで…
@shindokumaru: 暖簾という名のボーダー。この向こうに大人の世界がある。今日こそ越える。僕は大人になるんだ。勇気を振り絞って、そっ。「おい坊主!」肩を引っ張る力。おっさんが怖い顔をしている。失敗か…「女湯ならな、そこの柱の影の穴から覗けるぞ」…
@shindokumaru: 柔道部の先輩は今日も裏山で孤軍奮闘している。木から吊るした棒をホールドしたり足で絡め取ろうとしたり…「どんな殺陣ですか?」「相手は合気道四段!」「はぁ?」「どんな交わしも抑え込む技を学ばねば、俺はマサル君のファーストキスを奪…
@shindokumaru: あの子は毎年母の日になると私に白いカーネーションを渡した。意味はもちろんわかっている。今日渡す色もそれだろうと思っていたら、赤だった。「お母さんありがとう」花束を前に夫と二人、涙してしまった。後妻に入って10年。やっと私はあの…
@shindokumaru: 図書館で借りた本の間に、知らない人の保険証が挟まっていた。ちょうどいい。その保険証を使って心療内科へ行った。眠れないんです。じゃぁ眠剤を出しますが、少し強いのでご注意を。ちょうどいい。家に帰るとビールが残っていた。これで飲ん…
@shindokumaru: 彼女が男の唇を奪った。もとい、食いちぎった。女は狼女だった。「あたしも狙ってたのに!」横から吸血姫が男の首に齧りつき、血を吸った。残りはヤマンバ達が平らげた。「で、美味しかった?」「全然」「みんなを満腹にさせる程度の価値はあ…
@shindokumaru: タクシーも駐在さんもあたしを「綺麗な娘さん」と言った。だからこの人も気づくまい。畑にいた老女と、十年ぶりの再開。老女は一瞥して怒鳴った。「馬鹿!どんななりしたって、息子に気づかん親がどこにいる!」 負けだ。泣き崩れた僕の厚化…
@shindokumaru: 「地味な脇役でした」旅芝居にいた爺さんが、病床でつぶやいた。「主役を立ててなんぼ。お客に覚えられる事もねえ。とうとう華とは無縁だったなぁ」何言ってんだい。爺さんが鍛えた子供達が今、村の舞台で客を沸かせているよ。華のない役者は…
@shindokumaru: また男と別れたんだ。隠しても駄目。お姉ちゃんは恋が終わると必ずこの浜で、月に向ってダンスするんだもん。お姉ちゃん、踊るたびに綺麗になっていく。泣いて笑って、見せる表情が色めいていて、あぁこれを艶っていうんだ。もっと綺麗になっ…
@shindokumaru: 東から来たお方。貴方が話したオシチという娘は、恋しい人ともう会えないと知って街を焼いたのではないでしょうか。人は全てが叶わないと知った時、詩を生みます。オシチは全身で詩になろうとしたのですよ。貴方を恋した私も、オシチになりま…
@shindokumaru: お父さん。養子となって以降貴方の言いつけは全て守りましたが、一つ破りました。秘書の美幸さんの素性を調べました。その答えを聞き、私は彼女に結婚を申し込みました。彼女はこれで貴方の位牌に何憚る事なく「お父さん」と言えます。生さぬ…
@shindokumaru: 洗濯物が破かれた。ポストの中を引き出された。悪童め、尻尾掴んでやる。俺は一日中外で張り込んだ。うとうとして気がつくと自転車がパンクさせられていた。周りに鳥の羽。そういや先日軒下の鳩の巣を壊したっけ。見上げるとベランダの手すり…
@shindokumaru: 置き手紙で申し訳ありません/いささか急ですがお別れを申し上げたく/いまさらお許しを頂ける筈もなく/金をお返しする事も叶わず/ここに至り永遠のお別れを決断しました/いろいろお世話になりました/ますますのご活躍をお祈り申し上げま…
@shindokumaru: 殺しはするもんじゃないなぁ…あの日以来、パソコンのキーボードがちゃんと打てなくなったわ。「Q」「R」を打つとな、指が勝手に動くんだ。「*」そして「W」へ。そしたら、聞こえてくるんだ、声が。呪い、ってやつかね。…そろそろ限界だわ俺…