2013-01-01から1年間の記事一覧
@shindokumaru: 酉の市。見世物小屋がやってきた。中では年端もいかぬ男の子が大蛇に絡まれていた。初めて見世物を見た女の子の目に、彼の透き通るような肌が焼きついた。ぽっと上気して縁日を回る女の子の後ろから声。かの男の子だった。「おいで」…祭りが…
@shindokumaru: 女は今日も夜の街に出て見知らぬ男に抱かれる。すべてが終わって、女は石鹸の香りがする手で私に触れる。「私きれい?」私は抑揚のない声で答える。「きれいです今日も」 「ありがとう」女は私の電源を落とす。スマホという名の私はどの男よ…
@shindokumaru: Trick or Treat。お菓子をくれないと悪さしちゃうぞ。「Trick or Treat!」煉瓦造りの家の窓からお婆さんが手招きした。お邪魔します。お菓子まだかな。「ようこそ私のお菓子ちゃん」お婆さんが包丁を振りかざした。それハロウィンちゃう、赤…
@shindokumaru: 地下鉄で隣に座った女性がパソコンで小説を書き始めた。ちらりと盗み読み。「疲れきっていたKは池袋で地下鉄に飛び込み」Kって俺の名前。嫌な偶然だわ。池袋で降りた。途端に何かにつまづき、勢いで反対側に来た電車にぶつかった。朦朧とした…
@shindokumaru: 座敷童子が神社に来た若い侍に恋をした。でもこんなちびじゃ吊り合わないと森の狸に相談して大人の女に変身、侍の前に現れた。「そちゃ座敷童子」「え?」「その半纏とてっぺん結びではばれるのう」泣き出す童子。「これ食べて泣き止め」侍と…
@shindokumaru: 裏通りの花屋は普段は閉まっている。ある日隣町の夫人が店の前を通ったらシャッターがガラガラと上がった。次の日夫人は事故死。花屋は会葬者の需要を満たして閉まった。斜向かいの爺さんが急死した時もそんな感じだった。まぁ俺にはご縁がな…
@shindokumaru: 秋葉原駅京浜東北線ホーム神田寄り。終電待ちの私はタックルを食らった。見たら血走った目のサラリーマンがホーム末端の柵をよじ登っていた。「俺が俺のホームへひたすら向かって何が悪い!」そう叫んで線路上を神田方面へ消えていった。その…
@shindokumaru: 「私メリーさん。あなたのところに行こうとしたのに、消えないで」「私メリーさん。ここ、ずいぶん深い森ね…」「はぁはぁ…私、メリーさん。早まらないで。絶対あなたを探すから」「私メリーさん。今あなたの後ろにいるわ。ロープも切った。み…
@shindokumaru: 朝起きたら僕の影が僕と入れ替わっていた。影の僕は学校に行くなり憧れのチカちゃんを口説いた。彼女は一発で落ちた。よくやった。明日は僕が「おいおい、お前は一生俺の影さ」そんな…そこで覚めた。夢でよかったと起きようとしたら起きられ…
@shindokumaru: セイレーンの私はある船人を好きになってしまった。でも彼の船も沈めなければいけない。私は彼めがけ変身の歌をうたった。彼は魚となり船は沈んだ。いいことした、ごちそうだ。深海魚のムニエルぱくり。彼元気かな。えっこの魚が彼なの。ま、…
@shindokumaru: 僕は太陽に変身して好きな彼女を空から見守り続けた。彼女は熱射病になった。次は北風になって彼女を包んだ。彼女は風邪をひいた。「大丈夫ですか」通りすがりの男が彼女を介抱した。そのまま男と恋人になった。「太陽さん北風さんのお陰よ」…
@shindokumaru: 三人の男が棒に変身した。背の高い男は陸上選手に拾われ、高跳びの棒として何度もしなりながらも選手育成に役立った。普通の背丈の男は老人に拾われ、杖として地面に突かれながらも役立った。背が低くて太めの男は若い女性に拾われこき使われ…
@shindokumaru: 「俺は今からプリンに変身する。そしたら君そのプリンを彼女の机に置いてくれ」「食われるぞ彼女に」「構わん。彼女に噛み砕かれ飲みこまれ腸で吸収される。そして彼女の体内を永遠にめぐり続けるのだ」「うまくいくかね。腸から吸収されなか…
@shindokumaru: いじめられっ子が村の神社に参った翌朝、鳶に変身した。これ幸いといじめっ子を次々と空へ攫って殺した。だが全滅させた後も人を襲いたくなった。少年はいつしか本当に獣になっていた。戻りたい。ひいよろよろ。鳴き叫びながら少年は飛び続け…
@shindokumaru: 商人「心の綺麗な人しか聴こえない笛でございます」王「吹いてみよ。…聴こえん」宰相「私は聴こえます」商人「実は吹いておりません」宰相「騙したな!」王「嘘つくお前らが悪い!…して笛の名は?」商人「"口笛探し"にございます」王「その心…
@shindokumaru: こちらはビル管理センターです。69階営業92課フロアにて、泉課長と派遣の高橋さんの間で不倫の炎が発生。 課長の家庭内で初期消火を行うが延焼。従業員は階段を使用して69階へ集合の上、消火活動を行ってください。以上、管理センター勤務、…
@shindokumaru: "いい酒"とのつきあい方がわかったのはやはり30代になってからだ。何度も夜を重ねてじっくりと味わって、気分よく朝を迎えられた。でも40代になってからはいけない。"いい酒"に飲まれるようになった。たちの悪いのに出くわすと、それこそ連夜…
@shindokumaru: メイクアイプチエクステパット、台風はすべて飛ばしていった。彼に見せたくない、カピバラみたいなあたしの素顔。でももうメイクする時間もなく、彼登場。「なんだ、素の君のほうが可愛いじゃん」 おい台風、飛ばすのはこっちの方だぞ、あた…
@shindokumaru: 「明日台風だね。あの木の葉っぱも終わりか。じきに俺も…」病身の畏友は病室の外の老木を寂しげに見た。私は夜、病院の庭に忍び込み、木の後ろの壁に葉っぱを描いた。これで大丈夫と手元を見た。あっこれ水彩絵の具だ。翌日台風は木の葉と塀…
@shindokumaru: 子供の頃の運動会は秋だったが、中年になってからは初夏に行っている。今年はガンマ君がリードした。エルくんもかなりがんばったが勢い的に叶わなかったか。mmHgの上下のデッドヒートも捨てがたい。尿酸値くんはもっと頑「あーた!健康診断の…
@shindokumaru: 「運動会しましょう」誘拐犯が縛られている三人の男に言った。「この状態で運動会も何も」「出来ますよ。あなたがた先程白いものを食べましたよね」「ああ」「それ、ムラサキイガイとクサフグとベニタケなんです。そろそろ体に回る頃」言い終…
@shindokumaru: 「別れよう。俺たちはもう無理だ。わかったんだ、君の気持ちが」「何も言わなくてなんでわかるの?」「だって最近君…しめないから…」「それで判断するわけ?だったらあたしの気持ちたっぷり教えてあげるわよ!来なさい!」…「いや…戸締りの話…
@shindokumaru: 13歳で結婚、14歳で出産。そんな女の子のもとへあるジェンダー学者が駆けつけた。少女虐待だ、貴方には女の子らしく生きる権利がある。演説する学者に、「貴方は幸せ?」女の子は我が子をあやしながら言った。返答に困った学者を置いて、女の…
@shindokumaru: 「ねっとに写真をあっぷせよ、さすれば人の心の中で生き続けると死ぬ間際の私に言ったのは神様、あーたです。確かに人の記憶に残ったみたいだけれど、変な顔しかねっとに残っていないって話が違いませんか?」「よく言うではないか、悪貨良貨…
@shindokumaru: お姉ちゃんの耳の後ろからは苺の匂いがした。「春の匂いがする」と僕は言った。でも僕が小学校にあがったころから、それは銀杏の匂いになった。しばらくしてお姉ちゃんはお家を出て、苗字が変わった。お姉ちゃんの匂いを忘れられない僕は、大…
@shindokumaru: 彼に女が出来た。悔しい。彼の着物に付いている長い髪を集めて撚って、三味線の三の糸に仕掛けて弾いてみた。すぐ切れた。いいわこれ。髪を撚って弾いて。切れろ切れろ、あの人と切れろ。「別れよう」切れたのは私。彼が三味線の上の黒いもの…
@shindokumaru: 妻の幽霊はいつも彼岸花が描かれた灯籠を提げて現れる。そしてあの女への恨みを述べる。そんなに嫌いなら憑き殺せよ、幽霊だろ。”いいのね” ああ。次の日女は死んだ。寝ている間に蜘蛛が口に入って窒息したそうだ。その夜現れた妻の提灯の彼…
@shindokumaru: 女の家で添い寝していると、枕元を蜘蛛が這っていった。握りつぶしたが、開いた手は彼岸花を握っていた。家へ帰ってみると妻が床の間の幽霊絵を見上げていた。幽霊が提げている提灯に描かれていた彼岸花がなくなっていた。それ以降、妻が私の…
@shindokumaru: 彼の奥さんのお墓は曼珠沙華で囲まれていた。「わかっていたと思うが、彼女と再婚する。恨むな」彼は淡々と墓前報告した。その夜。「蜘蛛が!蜘蛛が!」悲鳴をあげる彼の部屋に飛び込むと、彼は無数の蜘蛛に埋もれていた。蜘蛛は彼の絶命を知…
@shindokumaru: 「私、あなたの前世で妻でした」目が泳いでいる女は私に言った。追っ払いついでにからかってみた。「昔占い師に聞いた話では、僕の前世は女性だったらしいけど」 「わかりました!」 数日後、前世の妻は男装で現れた。股間も膨らませて。好き…